ニュース

NEWS

「あけおめ退職」を起こさないためのマネージメント

2026.01.16

目次

1. 「あけおめ退職」とは何か

「あけおめ退職」とは、年末年始休暇明けに出社した際、同僚や先輩、後輩など身近な人が退職していたという現象を指します。新年の挨拶を交わす前に、すでに職場を去っている──そんな状況が、近年増加傾向にあると言われています。

この現象は単なる偶然ではなく、年末年始という特別な時期が持つ心理的・社会的な意味合いと深く関係しています。長期休暇による自己省察の時間、新年という心理的な節目、そして退職代行サービスの普及が重なり、退職という決断が表面化しやすくなっているのです。

2. データで見る「あけおめ退職」の実態

衝撃的な統計データ

マイナビの調査によると、年末年始休暇がある正社員のうち、28.4%が「あけおめ退職」を経験しています。さらに注目すべきは、20代では41.1%と、約4割が同様の経験をしているという事実です。

重要なデータポイント:

  • 正社員の約3人に1人が年末年始休暇中に「会社を辞めたい」と思った経験がある(30.8%)
  • 「連休中」に辞めたいと思う割合(18.5%)が「連休明け」(12.3%)より高い
  • 企業の中途採用担当者が選ぶ「退職者が多い長期休暇」は「年末年始休暇」がトップ(23.4%)

「あけおめ退職」がもたらす影響

身近な人の退職を経験した社員からは、「寂しい」「ショック」「驚き」といった感情に加え、「自分も辞めたい」という共感や、「より良い条件の職場を見つけているのでは」という羨望の声も聞かれます。さらに、「業績悪化への不安」「人員減による負担増への懸念」など、組織全体への影響を心配する声も少なくありません。

3. なぜ年末年始に退職を考えるのか

脳科学が解き明かす「休暇中の退職願望」

「休み明けに辞めたくなるなんて、気持ちが弱いからだ」──そう思っていませんか。実は、最新の研究によると、長期休暇中に退職を考える人のほうが、むしろ脳が正常に働いている証拠だとされています。

MBAと医学博士の知見を持つ専門家によれば、リラックスして副交感神経が優位になると、脳は日頃の「我慢」の蓋を外し、現状を冷静に点検するモードに入ります。つまり、正月休みにダラダラしている時こそ、脳は「このままでいいのか」とシビアに自分を見つめ直しているのです。

退職を考える主なきっかけ

調査データによると、年末年始休暇で「会社を辞めたい」と思ったきっかけは以下のような要因が挙げられています:

  • 給与や待遇への不満:帰省時の出費や友人との比較で、自身の待遇を見直す機会が増える
  • 業務量の多さ:休暇明けの業務負担を想像し、気が重くなる
  • 人間関係の疲れ:距離を置くことで、職場の人間関係のストレスを客観視できる
  • キャリアの停滞感:友人や家族との会話を通じて、自分の成長が感じられないことに気づく

新年という「心理的節目」の力

新年や新年度は、心理的に「リスタート」の意味を持ちます。日本の職場は制度面でも年度単位で動きやすく、人事異動、配置転換、評価の切り替えが重なるため、「ここで変わらなければ」という判断が生まれやすい構造があります。

4. マネージャーが取るべき予防策

待遇面での改善

「辞めたい気持ち」を緩和するために社員が求めるサポートとして、最も多く挙げられたのが待遇面の改善です:

  • 給与・ボーナスの見直し:物価高に応じた報酬の適正化
  • 福利厚生の充実:生活の質を向上させる実質的なサポート
  • 正当な評価制度の確立:努力と報酬のバランスを取る

業務面での配慮

給与だけでなく、働き方そのものへの配慮も重要です:

  1. 業務負荷の均一化:特定の社員に負担が集中しない仕組みづくり
  2. 有休取得の容易化:心理的に休みやすい職場環境の整備
  3. 休暇明けの業務調整:いきなり重い業務を振らない配慮
  4. 柔軟な働き方の選択肢:リモートワークやフレックスタイムの活用

職場環境の改善

人間関係や組織文化の改善も欠かせません:

  • ハラスメントの排除:パワハラやモラハラを許さない明確な姿勢
  • 個別ヒアリングの実施:定期的な1on1で社員の本音を聞く機会を設ける
  • 心理的安全性の確保:意見を言いやすい、失敗を許容する文化の醸成

5. 休暇前後の具体的なマネージメント施策

年末年始休暇前にすべきこと

休暇前のチェックリスト:

  • 今年の成果と貢献を具体的に承認・評価する面談を実施
  • 来年の目標や期待を明確に共有し、成長の道筋を示す
  • 休暇明けの業務スケジュールを事前に調整し、無理のない計画を立てる
  • 日頃の感謝を伝え、チームへの貢献を認める
  • 悩みや不満がないか、カジュアルにヒアリングする機会を設ける

年始の仕事始めでの対応

仕事始めの最初の数日間が、社員の気持ちを左右する重要な期間です:

  1. ウェルカムバックの雰囲気づくり:温かい挨拶と歓迎の姿勢を示す
  2. 軽めの業務からスタート:いきなりハードな業務を詰め込まない
  3. 早めの1on1実施:休暇中の気づきや考えを聞く時間を取る
  4. チーム全体での目標共有:新年のビジョンを明確に示し、モチベーションを高める
  5. 困りごとの早期発見:小さな変化や不満の兆候を見逃さない

日常的に心がけるべきこと

「あけおめ退職」を防ぐには、日頃からの信頼関係構築が最も重要です:

  • 定期的なコミュニケーション:週次や隔週での1on1を習慣化
  • 小さな成功の承認:日々の貢献を見逃さず、こまめにフィードバック
  • キャリア支援:社員の成長を本気で支援する姿勢を示す
  • 透明性の確保:会社の方針や意思決定プロセスをオープンに
  • 働きがいの創出:仕事の意義や社会的価値を共有する

6. まとめ:「選ばれる職場」を作るために

「あけおめ退職」は、決して長期休暇そのものが悪いわけではありません。むしろ、年末年始休暇は社員が自分の働き方を振り返り、キャリアについて考える貴重な機会です。この時間を通じて「今の職場の良さ」を再認識してもらえるかどうかが、マネージャーの腕の見せ所なのです。

「選ばれる職場」の条件:

  • 公正な評価と適切な報酬
  • 働きやすい環境と柔軟な制度
  • 成長を実感できるキャリアパス
  • 心理的安全性のある人間関係
  • 仕事の意義と社会的価値の共有

重要なのは、「退職を防ぐ」という守りの姿勢だけでなく、「この会社で働き続けたい」と思ってもらえる、攻めの職場づくりです。人材不足が深刻化する現代において、社員に「選ばれる」企業であり続けることが、持続可能な組織運営の鍵となります。

年末年始休暇を「キャリアを前に進めるための節目」と捉え、マネージャー自身もこの機会に自チームのマネージメントを振り返ってみてはいかがでしょうか。社員一人ひとりの声に耳を傾け、小さな改善を積み重ねていくことが、「あけおめ退職」を防ぎ、強いチームを作る第一歩となるはずです。


Archive