最近、採用業界では「AIを使った最新の手法」「欲しい人材だけに求人を配信する」「求人プラットフォームを使わない革新的なスキーム」といったサービスが急速に増えています。一見すると、とても新しい仕組みに見えます。
ですが、10年以上Web広告を運用してきた立場からすると、正直な感想としては、
「これ、ECや情報商材業界で10年以上前に流行った広告手法の転用だよね。」
もちろん、だから悪いと言いたいわけではありません。むしろ広告の仕組みとしては非常に優秀です。ただ、「革新的」という言葉だけが一人歩きして、本質が見えなくなっているように感じます。

EC業界では2012年頃から、次のような流れが当たり前になりました。
今では誰も驚きません。採用業界で最近話題になっているサービスの多くも、実はこれを「商品」から「求人」に置き換えただけです。
商品が求人になっただけ。購入が応募になっただけ。広告の考え方は、ほぼ同じです。

ECでよく言われる言葉があります。「どれだけ広告を流しても、売れない商品は売れない。」採用もまったく同じです。
どれだけ優秀なAIが、どれだけ精度高く、どれだけ転職意欲が高い人だけを連れてきても、求人内容が魅力的でなければ応募は来ません。
営業では、「知られていないだけです。」「もっと露出すれば応募が来ます。」という話をよく耳にします。もちろん、知られていない企業は存在します。
ですが、中小企業の採用現場を何千社も見てきた感覚では、応募が来ない原因の多くは認知ではなく、待遇です。
| 離脱につながりやすい求人条件の例 |
|---|
| 給与が地域相場より低い |
| 年間休日105日 |
| 残業が多い |
| 教育制度が見えない |
こういった求人を、どれだけ広告で届けても、求職者は比較します。そして離脱します。広告は魔法ではありません。
ECでは、広告よりLPが重要と言われます。広告はクリックさせるだけ。購入するかどうかはLPが決めます。採用も同じです。
求人広告は、応募してもらうための入口。応募を決めるのは、以下の要素です。
ここが弱ければ、広告費だけが消えていきます。

この広告手法で成果が出る会社には共通点があります。例えば、給与は悪くない、休日も業界平均以上、福利厚生も整っている、教育制度もある。でも、求人票が弱い。会社の魅力が伝わっていない。そんな企業です。
つまり、採用力はあるのに、発信力だけが弱い会社。こういう企業は広告との相性が非常に良いです。
逆に、待遇そのものが競合より弱い会社。この場合、広告は大量に人を連れてきます。しかし、比較され、離脱され、クリック費用だけが積み上がります。
広告会社は集客できます。でも応募は企業側の求人力で決まります。ここを混同してしまうと、「広告は回っているのに応募が来ない」という状態になります。
広告業界では昔から、「広告は営業マンを連れてくるだけ」と言われます。最後に契約を取るのは営業です。
採用なら、広告は求職者を連れてくるだけ。最後に応募を決めるのは求人票です。つまり、広告だけ改善しても意味がありません。
私は広告運用そのものを否定しているわけではありません。むしろ、ターゲティング広告は非常に優秀です。だからこそ、「広告だけ変えれば採用できる」という伝え方には違和感があります。
広告はアクセル。求人内容はエンジン。エンジンが弱ければ、アクセルを踏んでも前には進みません。
採用市場では、次々と新しい言葉が生まれます。AI採用。ターゲティング採用。ダイレクト配信。でも、その多くは広告業界では何年も前から使われてきた考え方です。
本当に見るべきなのは、「どんな広告を使うか」ではなく、「求人そのものに選ばれる理由があるか」。採用は広告だけでは成功しません。
広告・求人内容・待遇。この3つがそろって初めて成果につながります。
Web運用を長く見てきた立場からすると、結局そこだけは、10年前も今も変わっていないと感じています。