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給与や休日を改善しても、なぜ社員は辞める?ハーズバーグの二要因理論から考える「定着する会社」のつくり方

2026.09.05

「給与を上げた」「休日も増やした」「福利厚生も見直した」。

それでも、社員が辞めてしまう。

採用や人材定着について企業の方と話していると、こうした悩みを聞くことがあります。

もちろん、給与や休日、職場環境を改善することは非常に大切です。

しかし、「不満がない会社」と「ここで働き続けたい会社」は、必ずしも同じではありません。

この違いを考えるヒントになるのが、アメリカの心理学者フレデリック・ハーズバーグが提唱した「二要因理論」です。

今回は、この理論をもとに、中小企業・小規模企業が人の定着と組織づくりを考えるうえで大切なポイントを整理します。

1. ハーズバーグの「二要因理論」とは

1950年代、ハーズバーグらは約200人の技術者や会計士に対し、仕事をしていて「非常に良かったと感じた経験」と「非常に悪かったと感じた経験」を聞き取りました。

その結果、仕事に対する満足と不満には、それぞれ異なる要因が関係していると考えました。

それが、

「衛生要因」と「動機付け要因」

です。

🔧 衛生要因

  • 給与
  • 休日や労働時間
  • 福利厚生
  • 会社の方針や制度
  • 職場環境
  • 上司との関係
  • 人間関係
  • 雇用の安定

✨ 動機付け要因

  • 仕事をやり遂げた達成感
  • 仕事を認めてもらうこと
  • 仕事そのものの面白さ
  • 責任ある仕事を任されること
  • 成長している実感
  • 昇進や役割の広がり

ハーズバーグが示した重要な考え方は、仕事への「満足」と「不満」は、単純に一本の線の両端にあるわけではないという点でした。

2. 給与や休日は大切。でも、それだけでは足りない

ここで誤解してはいけないのが、

「では、給与や休日は重要ではないのか?」

ということです。

もちろん、そんなことはありません。

  • 給与が極端に低い。
  • 休日が少ない。
  • 残業が多い。
  • 上司との関係が悪い。
  • 会社のルールが曖昧。

こうした環境では、社員の不満が大きくなり、退職につながる可能性も高くなります。

つまり、衛生要因は「働き続けてもらうための土台」です。

ただし、ハーズバーグの理論では、これらを改善することは「不満を減らす」効果はあっても、それだけで仕事への強い満足や意欲が生まれるとは限らないと考えます。

給与を上げる。年間休日を増やす。福利厚生を充実させる。

それでも社員が、

「自分は何のためにこの仕事をしているのだろう」
「何年働いても同じ仕事だな」
「頑張っても誰も見ていない」

と感じていれば、「この会社で長く働きたい」という気持ちは生まれにくいかもしれません。

3. 定着率改善で陥りやすい「衛生要因ばかり」の考え方

社員が辞めると、

「給料が低かったのではないか」
「もっと休みを増やした方がいいのではないか」
「福利厚生が足りないのではないか」

と、まず待遇面に原因を求める会社は少なくありません。

これらを確認することは大切です。しかし、定着率改善を考えるときに、目に見える待遇だけに目を向けてしまうことには注意が必要です。

たとえば、給与には大きな不満がない。休みも取れる。残業もそれほど多くない。人間関係も悪くない。

それでも、

  • 仕事を頑張っても何も言われない。
  • 自分の意見が採用されることもない。
  • 新しい仕事を任されない。
  • この会社にいた先の自分が想像できない。

という状態だったとします。

決して「働きにくい会社」ではないでしょう。しかし、同時に、

「ここで働き続けたい理由が見つからない会社」

になっている可能性があります。

4. 人が「ここで働きたい」と思う動機付け要因

そこで重要になるのが「動機付け要因」です。

難しい人事制度をつくらなければならないわけではありません。

たとえば、

  • 「昨日のお客様への説明、すごく分かりやすかった」と具体的に仕事を評価する。
  • これまで上司が決めていたことを、一つ本人に任せてみる。
  • 「次はこの仕事までできるようになってほしい」と成長の方向を伝える。
  • 本人が出した改善案を実際に採用してみる。
  • お客様から届いた感謝の声を、担当した社員本人に伝える。

こうした一つひとつの経験が、

「自分の仕事を見てもらえている」
「自分は会社の役に立っている」
「以前よりできることが増えている」

という感覚につながっていきます。

社員に仕事を与えるだけではなく、仕事を通じて「達成・承認・責任・成長」を経験してもらう。これが、ハーズバーグの理論から学べる重要なポイントです。

5. 実は、中小企業だからこそできることがある

給与水準や福利厚生だけを比べれば、大企業に勝つことが難しい中小企業もあります。

しかし、動機付け要因は会社の規模だけで決まるものではありません。

むしろ、

  • 経営者が社員一人ひとりの仕事を見られる
  • 良い仕事をしたとき、直接言葉をかけられる
  • 社員の提案をすぐ会社の仕組みに反映できる
  • 若いうちから仕事を任せられる
  • 仕事の一部分だけではなく、最初から最後まで関われる
  • 本人の成長に合わせて役割をつくれる

こうしたことは、組織の小ささが強みになる部分です。

大掛かりな評価制度がなくても、

「最近どう?」
「この仕事は助かった」
「次はここまで任せたい」

という会話はできます。

社員数が少ない会社だからこそ、一人ひとりの仕事と会社への貢献を見つけやすいとも言えます。

人材不足の時代、中小企業が大企業と同じ条件競争だけをする必要はありません。

給与や休日という「条件」を整えながら、その会社だから経験できる仕事や成長をつくる。そこに、中小企業ならではの組織づくりのヒントがあります。

6. まとめ ― 「不満のない会社」から「働き続けたい会社」へ

ハーズバーグの二要因理論は1959年に発表されたもので、その後の研究では、衛生要因と動機付け要因をすべて明確に二分できるのかなど、研究方法や理論の普遍性についてさまざまな議論もあります。

そのため、

「給与は関係ない」
「やりがいさえあれば人は辞めない」

という単純な話として捉えるべきではありません。

給与も大切です。休日も大切です。人間関係も大切です。

そのうえで二要因理論から学べるのは、

「不満をなくすこと」と「ここで働き続けたい理由をつくること」は、分けて考えてみる必要がある

という視点ではないでしょうか。

求人を探しているとき、求職者が最初に見るのは給与や休日、勤務時間などの「条件」です。

しかし、入社してから毎日接するのは、

  • 任される仕事。
  • 上司からの言葉。
  • 周囲からの評価。
  • お客様からの反応。
  • そして、自分自身の成長です。

だからこそ、採用は「条件」だけではなく、定着は「経験」まで考える。

採用できる会社をつくるだけでなく、「ここで働き続けたい」と思える会社をつくる。

人材不足が続く今、採用は「人を集めること」だけで終わるものではありません。入社した人が力を発揮し、長く働き続けられる環境まで含めて考えることが、これからの採用には求められています。


株式会社リル

私たちは求人広告を「掲載すること」だけを目的とはしていません。採用市場や求職者心理、求人データをもとに、企業ごとの採用課題を分析し、応募獲得から採用、その先の定着までを見据えた採用支援を行っています。

参考文献
・Frederick Herzberg, Bernard Mausner, Barbara B. Snyderman『The Motivation to Work』Wiley, 1959
・American Psychological Association「two-factor theory of work motivation」https://dictionary.apa.org/two-factor-theory-of-work-motivation
・Robert J. House, Lawrence A. Wigdor「Herzberg’s Dual-Factor Theory of Job Satisfaction and Motivation: A Review of the Evidence and a Criticism」Personnel Psychology, 1967

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