働き方改革の進展、テレワークの普及、副業・兼業の広がり——企業を取り巻く労務環境は、ここ数年で大きく変化しています。こうした変化を背景に、労働基準法についても約40年ぶりとなる抜本的な見直しが議論されていることをご存じでしょうか。

労働基準法は1987年に大規模な改正が行われて以降、部分的な修正は重ねられてきましたが、制度の根幹に関わる見直しは長年行われていませんでした。
しかし、現在の労働環境は当時とは大きく異なります。以下のような社会変化が、法改正の議論を後押ししています。
こうした実態に対し、従来の法制度では対応しきれない場面が増えてきたことから、法律そのものを見直す必要性が指摘され、有識者による検討が進められてきました。

研究会報告書で示されている、企業に影響を及ぼす可能性のある主な論点を整理します。
現行制度では「4週4休」の特例により、理論上は長期間の連続勤務が可能です。これに対し、14日以上の連続勤務を認めない方向での見直しが検討されています。長期連勤が従業員の健康リスクを高めるという指摘が背景にあります。
現在、「週1日以上の休日付与」は義務ですが、どの曜日を法定休日とするかを明示する義務はありません。今後は法定休日を事前に特定することが求められる可能性があり、割増賃金計算の透明化や労使トラブルの防止が期待されています。
終業から次の始業まで一定の休息時間を確保する「勤務間インターバル制度」は、現在は努力義務です。これを原則11時間のインターバル確保として義務化する案が議論されています。
年次有給休暇中の賃金について、通常賃金方式を原則とする方向が示されています。日給制・時給制で働く従業員が不利にならないよう配慮した制度設計が意図されています。
勤務時間外の連絡対応をどう扱うかについて、労使でルールを整理するためのガイドライン策定が検討されています。現時点では、直ちに法的義務を課すものではなく、社内ルール作りを促す位置づけです。
健康管理のための労働時間通算は維持しつつ、割増賃金の算定については通算しない方向が検討されています。企業の実務負担を軽減することが狙いです。
一部の小規模事業場で認められている「週44時間」の特例について、利用実態が少ないことから廃止する方向が示されています。
改正内容が最終決定していない現段階でも、以下のような点は今後の制度整備において重要になると考えられます。
特に、シフト制や交代勤務を採用している企業では、休日設計や勤務間インターバルの確保が今後の重要な課題となる可能性があります。早めの準備が求められるでしょう。

労働基準法の見直しは、確かに企業にとって対応コストや実務負荷が生じる側面があります。しかし同時に、働き方の実態を見直し、従業員が安心して働ける環境を整える好機でもあります。
制度対応を「後追い」で行うのではなく、次のような視点で準備を進めることが重要です。
こうした視点で段階的に準備を進めることが、結果的にリスク低減と従業員との信頼構築につながります。
今後も法改正の動向を注視しつつ、自社に合った働き方の整備を進めていきましょう。