「求人広告を出しているのに、なかなか応募が来ない」
「応募が月に1件しかなく、このままでは採用できない」
「ようやく応募があったのに、面接前に辞退されてしまった」
地方の中小企業では、このような採用の悩みを抱えているケースも少なくありません。
採用がうまくいかないと、「もっと応募数を増やそう」「求人媒体を変えれば応募が増えるのではないか」と考えがちです。もちろん、応募数を増やすことは重要です。
しかし、地方の採用活動では、そもそも応募対象となる求職者が限られている場合があります。職種や地域によっては、1か月間求人を掲載しても、応募が1件もないことがあります。
そのような環境で、「応募0件を10件に増やそう」という前提だけで採用活動を考えてしまうと、現実的な採用戦略を立てることが難しくなります。
地方の採用では、応募0件を1件にすること。1件を2件にすること。その一歩が、大きな意味を持つ場合があります。そして、せっかく出会えた一人の求職者を、面接から内定、入社まで丁寧につなげることも、応募数を増やすことと同じくらい重要です。
今回は、地方の中小企業が見直したい、「大量の応募を前提としない採用戦略」についてご紹介します。
目次

地方の採用市場は、都市部とは環境が異なります。人口規模や年齢構成、産業構造などによって、求人に応募する可能性がある人の数は変わります。
総務省の「住民基本台帳人口移動報告 2025年結果」でも、東京圏への転入超過が続いており、地域による人口移動の偏りが確認できます。
また、中小企業庁の「2025年版小規模企業白書」では、人材が不足している小規模事業者の約6割が、直近3年間で予定していた人数を採用できなかったと回答しています。人材不足は、多くの中小企業に共通する経営課題になっています。
ただし、同じ地方企業でも、職種によって採用の難しさは大きく変わります。例えば、未経験者を幅広く募集できる仕事と、特定の国家資格や実務経験を必要とする仕事では、応募対象となる人数が異なります。
さらに、勤務地が限られていたり、交替勤務が必要だったりすれば、応募できる人は一層限られます。こうした条件が重なる求人では、1か月に1件の応募を獲得すること自体が難しい場合もあります。
例えば、ある地方企業が、専門資格を必要とする技術者を募集しているとします。これまで3か月間、応募は0件。そこで、求人原稿の見直しや求職者への直接アプローチを行い、翌月に1件の応募が発生しました。
もし「月10件の応募」を目標にしていたら、この結果は不十分に見えるかもしれません。しかし、3か月間応募がなかった求人で、初めて採用対象となる方から応募があったのであれば、それは採用につながる可能性を生み出した、重要な前進です。
もちろん、応募1件で十分という意味ではありません。その1件が採用条件に合っているのか。面接につながるのか。実際に入社してもらえるのか。さらに検証していく必要があります。
ポイント
重要なのは、応募数の目標を、地域や職種の実態から切り離して考えないことです。地方の採用活動では、次のような改善が採用成果を大きく左右することがあります。
※上記の応募件数は、地方の採用活動で起こり得る状況を説明するための例であり、地方企業全体の平均応募数を示すものではありません。
例えば、次の2社を考えてみましょう。
A社
月間応募数:10件
面接実施:2名
採用:0名
B社
月間応募数:2件
面接実施:2名
採用:1名
応募数だけを見ればA社の方が多くの求職者を集めています。しかし、実際に人材を採用できたのはB社です。これは仮の事例ですが、応募数だけでは採用活動の成果を判断できないことが分かります。
もちろん、B社が常に優れているわけではありません。採用すべき人数や、応募者の適性、入社後の定着状況によって評価は変わります。
大切なのは、応募数を増やす努力をしながらも、応募数だけを採用成功の基準にしないことです。

採用活動を改善する際に、ぜひ確認していただきたいのが「歩留まり」です。歩留まりとは、採用活動の各段階で、どれだけの求職者が次の段階へ進んだかを表す割合のことです。例えば、次のような指標があります。
| 指標 | 確認する内容 |
|---|---|
| 応募数 | 何人から応募があったか |
| 書類通過率 | 応募者のうち何人が書類選考を通過したか |
| 面接実施率 | 応募者のうち何人と面接できたか |
| 内定承諾率 | 内定を出した方のうち何人が承諾したか |
| 採用リードタイム | 応募から内定まで何日かかったか |
地方で応募が少ない企業ほど、これらの数値を確認することが重要になります。
例えば、応募がまったくない場合は、求人票の内容や認知を広げる方法に改善余地があるかもしれません。
一方で、毎月数件の応募があるにもかかわらず、面接前に辞退されてしまうのであれば、求人広告だけを改善しても問題は解決しない可能性があります。確認すべきなのは、応募後の対応です。
また、内定まで進むものの辞退が続く場合には、仕事内容や待遇について十分な相互理解ができているかを確認することが大切です。
ポイント
応募数だけを追い続けるのではなく、「応募から採用まで、どの段階で候補者が離れているのか」を把握することが、採用成果の改善につながります。

求人票は、給与や休日、勤務時間を掲載するためだけのものではありません。求職者にとって、会社を知る最初のきっかけになるものです。特に応募対象となる求職者が限られる求人では、一度求人を見た方に、その仕事の魅力をできるだけ具体的に伝えることが大切です。
例えば、次のような求人票があったとします。
工場作業員募集。未経験歓迎。資格取得支援制度あり
この内容だけでは、求職者は入社後の仕事内容を十分にイメージできないかもしれません。一方で、次のように書かれていれば、未経験の方も、仕事の進め方を具体的に想像しやすくなります。
入社後は先輩社員の補助からスタート。最初は道具の名前や使い方を覚え、少しずつ担当できる作業を増やしていきます
※上記は表現例です。実際の求人票には、確認できた教育体制や仕事内容を記載する必要があります。
求職者が応募するかどうかを判断する際の材料になるのは、例えば次のような内容です。
求人票に「働きやすい職場です」と書くだけでは、具体的な働き方は伝わりません。実際の勤務時間や休日、職場環境を確認し、それを文章で説明することが大切です。
大掛かりな採用サイトを制作しなくても、現場社員へのインタビューや仕事内容の写真を追加するだけで、求人票の情報を充実させることはできます。
ポイント
限られた求職者に、応募を検討するための十分な情報を届ける。それが、地方企業にとって重要な求人原稿の役割です。

求人広告を掲載した後、応募を待つだけになっていないでしょうか。求職者の中には、積極的に転職活動をしている方だけでなく、「良い会社があれば転職を考えたい」という方もいます。
マイナビの「転職活動実態調査(2025年)」によると、転職活動を行った人のうち、「必ず転職したい」と回答した方は28.5%。一方、「いい会社が見つかれば転職したい」と回答した方は56.9%でした。
つまり、転職を検討している人の中には、条件に合う会社が見つかるまで慎重に考えている方も多くいるということです。そのような方に自社の求人を知っていただくには、応募を待つだけでなく、企業側から接点をつくることも大切になります。
例えば、次のような方法があります。
すべてを同時に実施する必要はありません。重要なのは、募集する職種やターゲットとなる人材に応じて、適切な接点を選ぶことです。
また、求職者へ直接メッセージを送る際にも、全職種で同じ文章を使用するのではなく、それぞれの仕事に合わせた内容にすることが望ましいと考えます。
ポイント
「この仕事なら少し興味がある」と思っていただける接点を、一つずつ増やしていくことが大切です。

応募があった際には、企業側が求職者を選考することになります。しかし、企業が応募者を選ぶのと同時に、求職者もその会社で働くかどうかを判断しています。特に、ようやく獲得できた応募であれば、その後の対応を丁寧に進めたいところです。
例えば、応募してから企業からの連絡が何日もなかった場合、求職者は別の会社への応募を進めているかもしれません。また、在職中の求職者にとって、平日の日中だけで面接日程を調整するのは難しい場合もあります。
そのため、応募後の連絡をできるだけ早く行い、面接日程についても求職者の事情を考慮することが大切です。「応募を増やすこと」だけでなく、「応募してくれた方と実際に会うこと」にも目を向ける必要があります。
面接では、企業側からの質問だけでなく、仕事内容や働き方を説明する時間も設けましょう。例えば、次のような情報を伝えることで、求職者も入社後の働き方を具体的に考えやすくなります。
また、次のような質問を通じて、求職者が重視している条件を把握することも重要です。
もちろん、誰でも採用すればよいわけではありません。厚生労働省は、公正な採用選考において、応募者の基本的人権を尊重し、本人の適性・能力に基づいて判断することを基本としています。
ポイント
必要な選考は行いながら、「この会社で働くかどうかを、求職者自身も判断している」という視点を持つことが大切です。

採用活動では、内定を出した時点で一安心してしまうことがあります。しかし、内定を出したからといって、必ず入社してもらえるとは限りません。求職者は、複数の企業を比較していたり、現在の職場に残ることを検討していたりする場合があります。
特に地方企業の場合、数少ない候補者の一人が内定辞退となることで、採用活動を最初からやり直さなければならないこともあります。だからこそ、内定後の対応も大切です。
例えば、次のような点を丁寧に確認していきます。
また、内定した理由や評価した点を具体的に伝えることも、求職者が会社への理解を深めるきっかけになります。
ただし、大切なのは内定承諾を急がせることではありません。求職者が必要な情報を得て、納得して入社を判断できる状態をつくることです。
地方の中小企業では、経営者や現場責任者が求職者と直接話せる場合もあります。中小企業庁の「2025年版中小企業白書」では、経営者自らが採用活動を担っている企業の方が、予定人数を採用できたと回答した割合が高いことが示されています。
この結果だけで因果関係を断定することはできませんが、経営者自身が会社の考え方や仕事の魅力を伝えることは、採用活動に役立つ可能性があります。
大企業のように大人数を一度に選考するのではなく、候補者一人ひとりと向き合う。これは、地方の中小企業だからこそ実践しやすい採用方法の一つです。

地方企業の採用活動では、応募数の目標をどのように考えるかが重要です。もちろん、応募が増えることは望ましいことです。しかし、業種や職種によっては、1か月に1件の応募を獲得することさえ難しい場合があります。
そのような環境で、「毎月10件、20件の応募を集めなければ採用できない」と考えてしまうと、現実的な採用戦略を立てることが難しくなります。
地方の採用では、応募0件を1件にすること、1件を2件にすることにも、大きな意味があります。
こうした一つひとつの改善が、採用成果につながっていきます。
例えば、年間を通して考えれば、月1件の応募でも12件の応募になります。もちろん、その全員が採用条件に合うとは限りません。それでも、採用目標が年間1~2名の企業であれば、年間を通じて応募機会を確保し、候補者との接点を大切にすることは、十分に検討すべき採用戦略です。
この記事のまとめ
採用活動の目的は、応募数を増やすことそのものではありません。自社に必要な人材と出会い、納得して入社してもらい、長く活躍してもらうことです。
「何人から応募があったか」だけでなく、「出会えた一人を、どれだけ大切にできたか」。地方の中小企業だからこそ、そんな視点で採用活動を見直してみてはいかがでしょうか。
参考資料・出典
本コラムは、以下の公的資料・調査を参考に作成しています。
※本記事の「応募0件を1件にする」「月1件の応募」といった例は、地方企業の採用活動における考え方を説明するためのものであり、特定地域・職種の平均応募数を示す統計ではありません。採用目標は、実際の地域・職種の市場環境や企業の採用計画に応じて設定する必要があります。